お仏壇を「お内仏」と呼んでいます
真宗大谷派では、お仏壇のことを「お内仏」(おないぶつ)と呼んでいます。これは単に、家の中にある仏壇を指すものではなく、「家族ひとりひとりの心の中にある仏さま」を意味します。
お内仏と入仏式
お内仏は、阿弥陀仏の本願によって建立された極楽浄土を表現したものです。
ここには、ご本尊である阿弥陀仏が安置されます。残された者の生きる拠り所であり、私たちをお導きになる阿弥陀仏や、今ある私たちを育ててくれたご先祖様に感謝を捧げる場所でもあります。
亡くなれば必ず仏となり極楽浄土に行くことが約束されている浄土真宗では、位牌はありません。そのため、お内仏は、故人の位牌を安置する場所でも、先祖の霊を慰める場所でもないのです。
お内仏を新しく購入したり移動したときは、入仏式を行い、ご本尊をお迎えします。阿弥陀仏を家にお招きするということで、入仏式は大変におめでたい法要です。
入仏式には真宗大谷派のしきたりがあります。詳しくは、お寺の住職にご相談ください。
古いお内仏を処分される場合は、住職に永代経をあげてもらいます。
お内仏の置き場所
一般的には、次の場所がよいとされてます。
南向き
部屋の北側の壁に南に正面を向けて安置します。直射日光が当たらず、お内仏の保護にもなります。これは、高貴な人物は南を向いて座したという中国の習慣に由来しています。
東向き
東に正面を向けて安置すると、西、つまり西方浄土に向かって拝む形になります。
本山中心
宗派の本山に向かって拝めるように、お内仏を安置します。
しかし、こうした言い伝えには迷信も多く、各家庭の事情に合せて、もっとも相応しいと思われる場所に安置して構いません。購入する日や入仏式の日取りの良し悪しなども、真宗大谷派にはこれといった決まりはありません。
また、家族に亡くなった人がいなくても、家にお内仏を置くことは良いことです。家族の心の拠り所として、手を合わせてはいかがでしょうか。
普段のお内仏の荘厳(おかざり)
お内仏の中に飾る物を「荘厳」(おかざり)と言います。普段のお内仏の荘厳について、説明しましょう。
ご本尊(ごほんぞん)
阿弥陀如来のご絵像、または「南無阿弥陀仏」(六字名号)の掛け軸
お脇掛(おわきかけ)
向かって右側に「帰命尽十方無碍光如来」(十字名号) または親鸞聖人の御影の掛け軸
向かって左側に「南無不可思議光如来」(九字名号) または蓮如聖人の御影の掛け軸
法名軸(ほうみょうじく)
向かって右側に、もっとも近くに亡くなった方の法名を記した半幅の掛け軸
向かって左側に、先祖からの複数名の法名を記した合幅の掛け軸
上卓(うわじょく)
ご本尊の前に置く机です。ここには次のものを配置します。
火舎香炉(かしゃこうろ)
焼香を行うための香炉です。脚の一本が手前に来るように。
お仏供(おぶく)
ご本尊にお供えするご飯のことです。仏器に盛って、ご本尊と火舎香炉の間に置きます。
華瓶(けびょう)
キシミまたは青葉を挿して手前左右に置きます。
前卓(まえじょく)
中央正面中段に置く机です。ここには次のものを配置します。
真鍮製の花瓶 向かって左側に生花を挿して供えます。
陶器製の土香炉(どごうろ)
線香用の香炉です。脚の一本が手前に来るように。
真鍮製の鶴亀の燭台
普段は木製の赤木蝋を挿しておきます。赤木蝋は、木でできた朱塗りのろうそく型で、火は点きません。
*この3つをまとめて三具足(みつぐそく)と呼びます。
金灯籠(きんとうろう)
ご本尊の両側に吊り下げて、ご本尊を明るく照らします。
輪灯(りんとう)
阿弥陀仏の光明を表す灯りです。朝夕おお勤めの際に点灯します。
御文箱(おふみばこ)
蓮如聖人の法語を記した「御文」を入れる箱です。
和讃卓(わさんじょく)
「正信偈」(しょうしんげ)、三帖和讃(さんじょうわさん)などのお経の書を収めた和讚箱を置く机です。
輪、撥、鑰台(りん、ばち、りんだい)
勤行のときにだけに鳴らすカネとバチです。勤行以外のときには鳴らしません。使わないときは、輪の中に撥を正面に向けて入れておきます。真宗大谷派では、輪台は四角いものを使います。
「重い法要」のお内仏の荘厳
「思い法要」とは、報恩講などの特別な法要のことを言います。次の荘厳を用います。
切籠(きりこ)
真宗大谷派の正式な盆灯籠で、正しくは切籠灯籠と言います。盆提灯のような飾りはしません。
瓔珞(ようらく)
両脇の輪灯の上に吊り下げます。
供笥(くげ)
お供物を盛るための左右一対の八角形の台です。お菓子や果物も構いませんが、本来はお華束(おけそく)という小さなお餅を供えます。
五具足(ごぐそく)
三具足に鶴亀の燭台と花瓶を一つずつ追加したものです。ない場合は三具足で構いません。
打敷(うちしき)
金襴地などで仕立てた三角形の敷物です。前卓と上卓に掛けます。6月から秋彼岸前までは夏打敷、それ以外は冬打敷を使います。
これらを法要ごとに組み合わせて使います。組み合わせは、下記をご覧ください。
*打敷は季節に合せて夏用、冬用を選ぶ。
*華束は白供笥に白餅を杉盛りにする。供笥が小さいときは餅や落雁を数個盛る。
*鏡餅は折敷(おしき)に杉原紙を敷いて備える。
*立燭には碇型の和ろうそくを使うのが正式。
*燃香(ねんこう)には線香の火を付けたほうを左にして土香炉に寝かせる。
*焼香には金香炉に沈香(じんこう)や五種香を焚く。彼岸会では初日、中日、結願(最終日)の3日間行う。
普段のお給仕
お内仏にお花やご飯をお供えしたり、華瓶の水を取り替えたりすることを「お給仕」と言います。普段は、次のようなお給仕をします。
お花
華瓶に挿すのはキシミや青葉です。水を取り替えましょう。花瓶には式の生花を挿します。棘のある花、蔓に巻く花、造花は飾りません。
ろうそく
和ろうそくを使います。火を消すとき(おしめし)は、真鍮の火箸で芯を挟んで切り落とします。
お仏供
白飯を盛槽(もっそ)という道具で円柱状にして盛ります。朝のお勤めの後にお供えして、正午に下げます。
お掃除
ゴミは柔らかい毛箒で軽く履きます。漆塗りの部分は柔らかい布で拭きましょう。洗浄液と艶出し液を混ぜて布に染み込ませて拭き、乾いた布で拭き取ると艶がでます。金属製の仏具は手の汗で錆びることがるので注意しましょう。
重い法要でのお給仕
思い法要では、お給仕の内容が次のように変わります。
中陰(七七日)期間
立燭には銀濃(ぎんだめ)を使うのが正式です。*白でも可
百ヵ日法要
立燭には白いものを使います。
祥月命日
花瓶には四季の花を挿します。
打敷に色の決まりはありません。前卓、上卓の両方に掛けます。
華束は白餅を重ねて、左右一対を供えます。
立燭は一周忌からは朱色を用います。*白でも可
春と秋彼岸会(3月、9月)
花瓶には四季の花を挿します。
打敷に色の決まりはありません。前卓、上卓の両方に掛けます。
華束は白餅を重ねて、左右一対を供えます。
彼岸入りの前日の夕勤行後に荘厳します。
盂蘭盆会(7月または8月)
華瓶には槇の木を中心に、蓮の蕾など季節の花を挿します。
打敷に色の決まりはありません。前卓、上卓の両方に掛けます。
華束は白餅を重ねて、左右一対を供えます。
お内仏の前に左右一対の切籠を飾る(できればでよい)。
お盆の前日に、お掃除やお磨きをして、代々の法名を掛ける。
修正会(1月)や報恩講(11月)などの重い法要では、家族揃ってお寺に出かけ、法話を聞くのもよいでしょう。